財布の中で五円玉を見つけると、ふと手が止まることはないでしょうか。銅と亜鉛でできたその一枚は、他の硬貨と比べてもずいぶん軽く、真ん中には穴も空いています。軽さのわりに、多くの人がそこに特別な意味を見出してきました。お賽銭にまつわる金額の言い伝えについては、別の記事でご紹介していますが、今日は「持ち歩くお守り」としての五円玉についてお話しします。
「ご縁」という、よく知られた語呂合わせ
五円を「ご縁」に見立てる語呂合わせは、多くの方がご存じでしょう。この言葉遊びは、賽銭箱の前だけでなく、財布の中に一枚を大切に持ち歩く習慣にも広がっていったとされています。良いご縁を引き寄せたいという願いを、身近な硬貨に託す発想は、日本語ならではの遊び心といえそうです。
財布に一枚、忍ばせる習慣
五円玉をお守りとして持ち歩く場合、賽銭のように使ってしまわず、財布の隅や小さな袋に分けて入れておくという方も少なくありません。使わずに持ち続けることで、「ご縁」の願いをそのまま身近に置いておく、というのがこの習慣の考え方です。新しい財布を使い始める際に、五円玉を一枚入れておくとよいという言い伝えもあります。小さな巾着や御守り袋に納めて、鍵につけたり鞄の内ポケットに忍ばせたりする方もいるようです。
五円玉の意匠に込められた意味
五円玉の図案にも、それぞれ意味が添えられているとされています。
- 稲穂――農業の実りを象徴するとされる意匠です。
- 水――水産業を象徴するとされています。
- 歯車――工業の発展を象徴するとされる意匠です。
これらは、戦後の日本が農業・水産業・工業という産業の発展を願って選んだ図案と伝えられています。穴の空いた五円玉が登場したのは昭和二十四年のことで、当時よく似た大きさだった一円硬貨と見分けやすくするための工夫だったとも伝えられています。硬貨一枚に、これほど多くの願いが重ねられていると知ると、財布の中の五円玉を見る目も少し変わるかもしれません。
穴が空いていることについても、「見通しがよい」という言い伝えが添えられることがあります。小さな硬貨一枚に、ご縁と、見通しの良い暮らしと、産業への願いまでもが重なっている――そう思うと、なんだか愛おしく感じられます。
次に財布を開いたとき、五円玉が一枚あれば、賽銭箱に納めるだけでなく、そっと取り分けて持ち歩いてみてはいかがでしょうか。小さな硬貨に、あなたなりの想いを込めてみてください。