肌寒さを感じ始めると、そろそろこたつを出そうかと考える方も多いでしょう。実はこの「こたつを出す日」にも、古くからの言い伝えがあるとされています。「炬燵開き(こたつびらき)」と呼ばれるこの習わしは、旧暦十月の初めての亥の日に行うのがよいと伝えられてきました。今日は、炬燵開きと初亥の日にまつわるお話を天啓の防壁がご紹介します。

「炬燵開き」とはどんな日か

炬燵開きとは、その年初めてこたつに火を入れ、暖房器具を使い始める日を指す言葉です。旧暦十月の最初の亥の日、いわゆる「初亥(はつい)の日」に行うのが良いとされ、現在の暦ではおおむね十一月にあたる時季です。武家や商家では、この日を境に囲炉裏や火鉢に火を入れる「炉開き」を行う習わしもあったと伝えられています。

なぜ「亥の日」が選ばれたのか

亥の日が選ばれた理由には、古代中国から伝わる陰陽五行の考え方が関わっているとされています。十二支の「亥」は五行のうち「水」の性質を持つとされ、火を扱う炬燵開きや炉開きを、火災から遠ざかるとされる水の気の日に行うことで、火の用心を願ったのだと伝えられています。火を暮らしに迎え入れる日を、あえて水の気配と結びつけるところに、昔の人の知恵がうかがえます。

二の亥、三の亥という数え方

旧暦十月には、亥の日が二度か三度めぐってくるとされ、最初の亥の日を「一の亥」、次を「二の亥」と数える地域や家柄もあったと伝えられています。武家では一の亥、庶民の間では二の亥や三の亥に炬燵開きを行うといった使い分けも見られたとされ、身分や地域によって日取りの慣わしが異なっていたようです。

現代の暮らしにおける「開く日」

今では、こたつを出す時期に厳密な決まりを気にする方は少なくなりましたが、日付を意識せずとも「そろそろ肌寒くなってきたから」と手を伸ばす、その感覚こそが暦の言葉と重なっているのかもしれません。こたつを囲んで過ごす時間そのものが、火の恵みを大切にしてきた昔からの暮らしの延長線上にあるといえそうです。

今年、こたつを出すときには、その温もりの向こうに、火を大切に迎え入れてきた昔の人々の心づかいを、少しだけ思い浮かべてみてはいかがでしょうか。